冷たく湿った京都の朝。 痴話喧嘩の怒号を路地裏に響かせながら サンダルで追いかける厄介な女。 恥も遠慮も隅際に追いやり 道の真ん中で 男の腕を振り舞わす。 水溜まりには鈍重な雲。 終わらない悪夢みたいな……どうしようもない朝だった。
「よございましょ」 昔お婆ちゃんが電話口で話しているその言葉が格好良くって 何度も何度も「よございましょ」って真似して呟いていたな
歯医者の後そのまま帰りたくなくて フラフラと浮遊した。 小さな駅に降り立つと線路脇の荒れ地に 棒立ちの菜の花。 息子よ … 春が来ているよ。 って心の中で呟いた。 お前と別れた冬が 少しずつ終わろうとしている。
今の世の中嘘みたいな商売があるんだよ。 時代が変わってね。 たったこんなことするだけで、 たった一晩のうちに、 お金がザクザクっていうような、ね。
最後まで、阿吽の呼吸だった。ありがとうって言葉が別れの言葉だってこともきっとあの人はわかっている。 ありがとう。 ありがとう。
正午前、バスに乗った。車内には、 高齢者。 お年寄り。 老人。 シニア。 ふと、車窓から外をみた。信号を待つ人すべてが、 高齢者。 お年寄り。 老人。 シニア。 これが、 最新の日本の風景で御座います。
機械仕掛けのように正確で 硝子細工のように脆い 女の心身。ここ数日の不可解な挙動も 月のリズムに従ったまでのこと。
つらいつらいつらい。 おいしいおいしいおいしい。 どきどきどき。 さむいさむいさむい。 だいすきだいすきだいすき。あー、毎秒忙し。 わたしの心。
リビングの水槽の中で群れをなす小魚。水で満たされたこの小さな箱の中で 幾多もの世代交代が為されてきたはずだが、人の目にうつる眺めは何年も変わらぬまま。今宵もドラマは続く。
壇ノ浦に想いを馳せる夜茶番パンデミックも何時しか春の夜の夢の如く
みんなどこにいっちまったんだい。ロビンソンクルーソー的っつーか、 横井庄一的っつーか。そんなキブン。
大袈裟なリアクションは疲れる。 しかし、びっくりしているくせに無表情ってのもイラっとするのものだ。
嫌だというならやめておこう。私は優しい人だから。
その思考を可視化する決意。
行く宛も無く漂うだけの思考。
狂い鳴く雀に猫どもが小躍りする曇天。
「深呼吸する言葉」という”場所”は、 酒場のようでもあり、公園のようでもある。
「ごめんね」の一言で解決できるほど、元々子供はたくましい。 たくましくない親が介入してきても、解決できるとは思えないが。
深呼吸どころか、呼吸さえ止めたくなる時がある。
てくてく歩いてお野菜を買いに行く。 この行為、派手ではないけれど刹那的。
美しすぎる歯科衛生士が私の首に手をまわし、エプロンをつける。 ああ、世のオヤジどもの気持ちが少しわかったよ。
お隣のチワワが歯を剥き出して、吠える吠える吠える吠える吠える。
ここで書く言葉がみつからない夜。 頭の中に大きな蜘蛛が巣くっている夜。
今日も試練に耐えた。それは幻と知っていても、一生懸命頑張ってしまった。 まあ、そんな自分でもいいと思った。
福岡に住んでいます、と言う。 38歳の女です、と言う。 今日は七夕の夜9時半過ぎです、と言う。 突然どれもこれも本当かどうかわからなくなる。そして真面目顔して「私」を演じている事に吹き出してしまうのだ。
部屋の掃除とモノの整理で90% 、睡眠で10% 。 心の中のゴチャゴチャはこれで100%無くなる。
現代の魔法、SNS。
先延ばしにしないと決めた瞬間から、今までの多くが覆(くつがえ)るだろう。
ジェムストーンで満足する私の正体は、ダイヤモンド級のハートを毎日欲しがる贅沢女。
今日の空は雲の博覧会だよ。昼食を食べに帰って来た夫が言う。 そうそう。私もパスタを冷やしながら、雲の事を考えていたんだよ。