深呼吸する言葉・港の女「J」

主無き島に取り残された深呼吸歌人の記録

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

深呼吸する言葉・263

冷たく湿った京都の朝。 痴話喧嘩の怒号を路地裏に響かせながら サンダルで追いかける厄介な女。 恥も遠慮も隅際に追いやり 道の真ん中で 男の腕を振り舞わす。 水溜まりには鈍重な雲。 終わらない悪夢みたいな……どうしようもない朝だった。

深呼吸する言葉・262

「よございましょ」 昔お婆ちゃんが電話口で話しているその言葉が格好良くって 何度も何度も「よございましょ」って真似して呟いていたな

深呼吸する言葉・2 61

歯医者の後そのまま帰りたくなくて フラフラと浮遊した。 小さな駅に降り立つと線路脇の荒れ地に 棒立ちの菜の花。 息子よ … 春が来ているよ。 って心の中で呟いた。 お前と別れた冬が 少しずつ終わろうとしている。

深呼吸する言葉・260

今の世の中嘘みたいな商売があるんだよ。 時代が変わってね。 たったこんなことするだけで、 たった一晩のうちに、 お金がザクザクっていうような、ね。

深呼吸する言葉・2 5 9

最後まで、阿吽の呼吸だった。ありがとうって言葉が別れの言葉だってこともきっとあの人はわかっている。 ありがとう。 ありがとう。

深呼吸する言葉・258

正午前、バスに乗った。車内には、 高齢者。 お年寄り。 老人。 シニア。 ふと、車窓から外をみた。信号を待つ人すべてが、 高齢者。 お年寄り。 老人。 シニア。 これが、 最新の日本の風景で御座います。

深呼吸する言葉・257

機械仕掛けのように正確で 硝子細工のように脆い 女の心身。ここ数日の不可解な挙動も 月のリズムに従ったまでのこと。